「ねえパパ、空ってなんで青いの?」
朝ごはんを食べながら、ユウタが聞いてきました。
「空にはね、水がうすく浮いていて、それが光を……こう、こまかく砕いて……えーと……とにかく、青く見えるんだ!」
「ふーん……」
ユウタはちょっと納得して、でも眉毛をひそめていました。
その日から、ユウタの「なんで?」ラッシュが始まりました。
「ねえパパ、うさぎはなんで跳ねるの?」
「ねえパパ、おならって止められるの?」
「パパ、おじいちゃんはなんでハゲてるの?」
パパは答えます。
「うさぎはね、跳んだほうが足が速いからだよ!」
「おならは…止めると、お腹の中でパーティーが始まるんだ!」
「おじいちゃんは……長生きしすぎたから、髪の毛が先に旅に出たんだよ!」
ママはそのたびに笑って言います。
「また適当なこと言って……」
でもユウタは目をキラキラさせて「パパって、なんでも知ってるんだね!」と尊敬のまなざし。
ある日、ユウタが真剣な顔で聞きました。
「パパ……どうして人は死ぬの?」
パパは少しだけ黙って、それから言いました。
「……うーん、それはね……“全部を楽しむため”かな」
「え?」
「ずっと同じだと、大事にできないことってあるでしょ?だから、終わりがあるから、今日っていう日が特別なんじゃないかなって、パパは思う」
ユウタは少し考えてから言いました。
「パパって、やっぱりなんでも知ってるね」
その晩。ユウタが寝てから、ママが言いました。
「ねえ、けっこういいこと言うじゃない」
「……まあ、たまにはね」
「でも、おならの中のパーティーはさすがにひどいわよ?」
「そこは……うまく言ったと思ってるんだけどな……」
次の朝、ユウタがにこにこしながら言いました。
「パパ、今日の『なんで?』はね……」
「おお、なんでもこい!」
「パパはどうしてパパになったの?」
パパは少しだけ考えて、優しく答えました。
「ユウタがパパを選んでくれたからだよ」
ユウタは笑って、「じゃあハズレじゃなくてよかったねー!」と叫びました。
パパは少し苦笑いしながら、朝ごはんをかきこんで出かけていきました。
その背中は、ちょっぴりだけ大きく見えたのでした。
一言解説
完璧じゃない親でも、子どもにとっては世界一の答えをくれる存在です。「なんで?」に向き合うことで、お互いの心が近づいていく。この物語は、親子の会話が持つ力と、何気ない日常の中にある温かさを描いています。
考えてみよう
・あなたは「なんで?」って聞きたくなったこと、ある?
・誰かの答えがうれしかったこと、覚えてる?
・自分が親になったら、どんなふうに答えると思う?