「じゃあ、これが名刺。カナちゃん、今日から“かいしゃいん”ね!」
パパが突然言い出した「かいしゃごっこ」。
週末の午後、カナはリビングの“会議室”でパパと向き合っていました。
「では、会議をはじめます。今日の議題は“夕ごはん何にするか”です」
「はいっ、カレーに一票です!」
「ふむ、反対意見は?」
「ハンバーグもいいと思います!」
「意見が分かれましたので、プレゼンタイムに入ります」
パパは真顔で紙にグラフを描き、カナはおもちゃのフライパンで“再現調理”。
ママはあきれ顔で笑っていました。
「カナ、パパが会社でなにしてるか知りたいって言ってたから」
「ふーん……でも会社って思ったより楽しそう!」
「いや、実際はもっと大変だぞー」と笑うパパ。
次の週末、今度はカナが社長になりました。
「社員番号001番、パパ。今日の仕事は洗濯物たたみ!」
「えぇぇ!?」
「報告書も忘れずにねー」
こうして始まった“週末かいしゃ”。
遊びながら、カナは報告の仕方や相談のタイミング、相手の気持ちの聞き方を少しずつ学んでいきました。
ある日。
「パパ……ほんとの会社もこんなふうに、みんな仲よし?」
パパは少しだけ黙って、それから言いました。
「そうだったらいいな。でも、そうなるようにがんばってる人もいるよ」
「ふーん……じゃあ、カナもそういう人になろうかな」
「うん、それが一番だ!」
その日の“社内報”には、カナの字でこう書いてありました。
『パパの会社、ちょっとたいへん。でも、パパがいるから大丈夫。』
一言解説
「会社ごっこ」はただの遊びではなく、大人の世界を子どもが知る貴重な入口になることもあります。遊びを通して仕事の意味や責任、コミュニケーションの大切さを知ることが、将来の気づきにつながるかもしれません。
考えてみよう
・あなたが「会社ごっこ」をするとしたら、どんな仕事がある?
・家のなかでも「チーム」でやってることって、あるかな?
・大人ってどんなことで大変そうに見える?