りんちゃんは、友だちと約束をするのが大好きな女の子でした。
ある日の学校の帰り道、大好きな友だちのまいちゃんが声をかけてきました。
「ねえ、今日の放課後、公園で遊ぼうよ!」
「うん、行く行く!ブランコもしたいな!」
ふたりは楽しそうにうなずきあい、わかれて帰りました。
家に帰ったりんちゃんは、おやつを食べたあと、テレビをつけてアニメを見はじめました。
「ちょっとだけ……」と思っていたのに、気づくともう外はうすぐらくなっていました。
(あっ……まいちゃんとの約束……!)
時計を見ると、もう公園に行くにはおそすぎる時間でした。
りんちゃんはあわててランドセルを開けましたが、まいちゃんの連絡先は分かりません。
そのまま次の日の朝が来ました。
教室で、まいちゃんが近づいてきて言いました。
「きのう、どうしたの?ずっと待ってたんだよ」
りんちゃんは、心の中でドキンと音がしました。
そして、つい口にしてしまいました。
「お母さんに、外に出ちゃだめって言われたの……」
まいちゃんは少しさびしそうな顔をして「そうなんだ」と言って席に戻っていきました。
その日の放課後、りんちゃんは学校の近くで、まいちゃんのお母さんと自分のお母さんが話しているのを見かけました。
「昨日のこと、うちの子が何か悪いことしちゃったのかな……」
まいちゃんのお母さんが心配そうに言っています。
それを聞いたりんちゃんは、はっとしました。
(わたしのうそのせいで、まいちゃんのお母さんが悩んでる……)
家に帰ったあとも、そのことがずっと頭からはなれませんでした。
夜、勇気を出してお母さんに話しました。
「うそ、ついちゃったの……」
お母さんは、少しだけおどろいた顔をしてから、やさしく頭をなでてくれました。
「うそをつくことは、だれにでもあるよ。でも、大事なのは、そのあとどうするかだよ」
りんちゃんはうなずきました。
次の日、りんちゃんは思いきって、まいちゃんに言いました。
「きのうのこと、ごめん。ほんとうはテレビ見てて、忘れちゃって……。うそついてごめんね」
まいちゃんは目をぱちくりさせてから、ふっと笑いました。
「なーんだ。じゃあ、今日はほんとに遊べる?」
「うん!ちゃんと行く!」
そしてふたりは、またブランコで遊ぶ約束をしました。
うそをついてしまったことも、ほんとうを言うのがこわかった気持ちも、きっとだれにでもある。
でも、りんちゃんはその日、「ごめんね」と言えたことで、心がすこし軽くなったのでした。
一言解説
りんちゃんの小さなうそが、まわりの人に思わぬ心配をさせてしまいます。このお話は、「うそをつくこと」と「うそをついたあとの行動」について考えさせられます。間違いに気づいたとき、どうするのがよいのかを学べます。
考えてみよう
- りんちゃんは、なぜうそをついてしまったのかな?
- まいちゃんのお母さんは、どうして心配していたと思う?
- うそをついたあと、りんちゃんがとった行動についてどう思う?