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嘘を聞く家

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ある地方の村では、「嘘を聞く家」という古びた空き家が語り継がれていた。外見はどこにでもある木造の平屋だが、そこに入って嘘をつくと、必ず「ほんとうは?」という声が響くという。実際に誰かが体験した話ではなく、代々伝わる怪談として扱われていたが、中学生のタクヤはその話を面白がり、友人のヨウスケと共に夜その家を訪れることにした。

2人は懐中電灯を持ち、塀を乗り越えて家に入った。内部は埃っぽく、家具はすべて布をかぶっている。電気は通っていないが、月明かりが窓から差し込み、うっすらと輪郭が見える程度だった。

「ここが“嘘を聞く家”?全然怖くないじゃん」

タクヤはそう言いながら、わざとらしく「ぼく、幽霊信じてるんだ」と言った。何も起きなかった。

「ほら、やっぱウソじゃん」とヨウスケが笑うと、その瞬間、奥の部屋から「ほんとうは?」という声が聞こえた。2人は凍りついた。

慌てて逃げ出そうとしたが、扉が開かなくなっていた。2人は叫びながら、もう一度懐中電灯をつけると、壁に誰かが指でなぞったような文字が浮かび上がっていた。「つぎはだれ?」

息を呑んだ2人だったが、ヨウスケが突然「こんなの、誰かのいたずらだ」と言って壁をたたいた。すると部屋全体が軋みをあげ、「またきたね」と女の声がした。

やっと扉が開き、2人は転がるように外へ逃げ出した。それから数日、ヨウスケの様子がおかしくなった。誰かの声に怯え、夜にうなされ、「ほんとうは?」と何度もつぶやくようになった。

タクヤは彼を心配しつつも、あの日の声を本当に聞いたのか、自分の記憶に自信が持てなくなっていた。ある夜、タクヤの部屋の壁に爪で書かれたような文字が見つかった。「まだ、いる」

考えてみよう

・あなたは怪談や言い伝えをどう受け止めますか?
・「嘘をついたら響く」という家があったら、どう行動しますか?
・恐怖を感じたとき、誰かと共有することで和らぐと思いますか?

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