ある夏の日、商店街の入り口にある「ピカピカアイス屋」で事件が起こりました。
お店の目玉商品「ミラクルダブルチョコアイス」が、なんと忽然と消えてしまったのです。
「今朝、冷凍庫に入れておいたのに……全部ない!」
店主のパンダさんは頭をかかえました。あれは今日だけの限定品、しかも予約でいっぱい。どうしても見つけなくてはなりません。
そのとき、「ぼくが調べてあげるにゃ」と現れたのが、名探偵ネコのニャーロック。
ひげをピンと立て、虫メガネを取り出します。
「まず、足あとを調べるにゃ」
アイスが入っていた冷凍庫の前には、小さな足あとが点々とついています。
「これは……ハトの足あとにゃ!」
ニャーロックは得意げに言いました。
しかし次の瞬間、空から「ポトッ」と何かが落ちてきました。アイスのカップのフタです。しかも、ベンチの上にちょこんと座る子ネズミのポコの手元から!
「ポコくん、そのアイスは……?」
「ちがうよ! ぼく、もらったんだよ。おじいちゃんにもらったの。」
「おじいちゃん?」
そこへ現れたのは、謎の老人タヌキ。
「わしが昨日の夜、冷凍庫から……じゃなくて、忘れてたのを冷凍庫に入れなおしたんじゃよ。けど、朝になったら冷たすぎて、温めてたら全部とけちゃってのう。もったいないから、冷たいジュースにして配ったんじゃ」
「ジュース……?」
実は、アイスをジュースに溶かして再配達していたという、とんでもない展開。
店主のパンダさんはあ然。
「せめて相談してよぉ〜!」
けれど、アイスのジュースは評判が良く、行列までできていました。
「新商品として売りましょう!」
そう提案したのはニャーロック。
パンダ店主は悩みましたが、「おいしいからいいか」と笑いました。
こうして「ミラクルチョコドリンク」は町の名物になり、ニャーロックはまた「事件を解決したにゃ」と満足げに帰っていきました。
でもその夜——。
「ふう、今日も名探偵だったにゃ」
家でくつろぐニャーロックの机の下には……大量のアイスカップがこっそり捨てられていたのでした。
一言解説
失敗やトラブルが思わぬアイデアにつながることがあります。予想外の出来事も、見方を変えると新しいチャンスになるかもしれません。この物語は、考え方ひとつで困ったことも笑顔に変わる力を教えてくれます。
考えてみよう
・あなたはアイスが全部なくなっていたら、どうする?
・まちがいが新しい発明につながることってあると思う?
・ニャーロックがアイスを食べていたとしたら、どう思う?