学校の裏にある動物小屋では、白いにわとりが2羽かわれていました。毎週、どうぶつ当番が世話をします。
月曜日の朝、当番だったゆうきくんとさなちゃんは、えさや水をあげて掃除もがんばりました。
「ドア、ちゃんとしめた?」とさなちゃんが聞くと、
「もちろん。カチッて音がしたもん」とゆうきくんは答えました。
しかし、その日の昼休み、大きな声が校庭にひびきました。
「にわとりが逃げてるー!!」
先生たちが走ってきて、みんなで大さわぎ。校庭をにわとりが走り回り、子どもたちはびっくり。
やがて、先生がにわとりをつかまえて小屋に戻しました。
「だれがドアを開けっぱなしにしたんだ?」
「たぶんゆうきじゃない?さなはいつもしっかりしてるし」
「ぼく、しめたよ……ほんとうに……」
でも、クラスの中では、ゆうきくんがやったという空気が広がっていきました。
ゆうきくんは、休み時間にだまって絵をかいていました。
(なんでぼくだけが……)
その日の放課後、さなちゃんがそっと近づいてきました。
「……もしかしたら、ちゃんと確認しなかったの、わたしかも……でも、こわくて言えなかった」
ゆうきくんはびっくりして、顔を上げました。
「でも、ぼく、みんなににらまれたよ」
「うん……ごめん」
次の日の朝、さなちゃんは先生に話しました。先生は静かにうなずいて言いました。
「さなちゃん、ありがとう。勇気がいったと思うよ」
そして先生はクラス全体にこう言いました。
「ひとを悪者にするのはかんたん。でも、ほんとうのことを知るには、ちゃんと話しあうことが大切なんだよ」
その日、ゆうきくんはひさしぶりに笑って友だちと話しました。
さなちゃんは、少しだけ肩の力がぬけたような気がしました。
一言解説
このお話は「思いこみ」や「決めつけ」がどれだけ人を傷つけてしまうかを伝えています。ほんとうのことを知るには、だれかの話をちゃんと聞こうとする姿勢が大切だと気づかせてくれます。
考えてみよう
- どうしてみんなは、ゆうきくんのせいだと思ってしまったのかな?
- さなちゃんは、どうしてすぐに言えなかったんだろう?
- 「ほんとうのことを言う勇気」って、どんなときに必要だと思う?