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カラスの恩返しは、本当の恩返し?

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ある日、少年リクは、道ばたで羽をけがしたカラスを見つけました。
まわりの大人は「ほっときな」と言いましたが、リクは放っておけず、
自分のハンカチをほどいて、カラスの羽をそっと包みました。

カラスは「カア…ありがと…」とつぶやいて、飛び去っていきました。

──数日後。

学校の下校中、リクが道でつまずいて転ぶと、上から「カアッ!」と声が。
見ると、例のカラスが、木の枝から何かを落としました。

パサッ──それは、コンビニのおにぎりでした。
「お腹すいてるでしょ。恩返し。」とカラスが言いました。

リクは戸惑いました。
「……ありがとう。でも、これ、どこから持ってきたの?」

カラスは言いました。
「ちょっとだけ人の家の前に置いてあったやつ。落ちてたから、だいじょうぶ。」

リクは黙って、おにぎりを見つめました。
そのあと、そっと落ちていたおにぎりを近くのコンビニに持って行って、
「拾ったんですけど」と店員さんに渡しました。

──その夜。

カラスがまた来て、言いました。
「せっかくの恩返し、受け取らないなんて、なんで?」

リクは、ゆっくり答えました。
「たぶん、それは“恩返し”じゃなくて、“別の問題”になるから。」

カラスは、しばらく何も言わず、ただ、「カア……」と静かに羽をたたんで、
また空へ飛んでいきました。

一言解説

この物語は、「善意」と「行動の正しさ」は必ずしも一致しないことを描いています。
カラスは恩返しのつもりでも、それが“誰かのもの”だったとすれば、結果的には別の問題が生まれます。
子どもにとっては、「善意であっても、していいことといけないことがある」という判断は非常に難しい。
リクのように、“行動の意味”を自分なりに考えて選べるようになってほしい、という願いを込めました。

考えてみよう

カラスの「恩返し」は正しかったと思う?
リクがとった行動について、どう思った?
自分だったら、どうする?

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